「拓斗の唇、気持ちいい……」


そう呟いた途端、抱きしめられていた私の肩は拓斗の左手でグッと押されてふたりの間に距離ができた。


私の肩を押す方と反対の手で、拓斗は自分の顔を覆い隠すように押さえ俯いている。


拓斗の耳、真っ赤。


「ごめん、やっぱ俺のファーストキスをもらってっていう話は無しで」

「ぇ……?」

「口にキスしたら俺、止まれなくなるから、しない」


姉みたいな私とは、練習でもそういう事なんてしたくないっていう意味?


しない、と拓斗に言われて、少し傷ついている自分がいて驚いた。