「ごめん……終電行っちゃったね」


行かないでー! 電車、行っちゃダメ―!!


拓斗の距離が近すぎて、顔が熱いだけじゃなく体温まで上がってきた気がする。


「今日は金曜日だからどこも空いてないと思うし……」

「ひぁ!?」


コップを持つ私の手に、拓斗の大きな手が重ねられた。


私の肩にもたれているから拓斗が話すと身体に息がかかって、背中がゾクゾクする。


「俺の家、ここから歩いて行ける距離だから泊っていきなよ。俺はソファで寝るから」


拓斗は顔を上げると私の顔を覗き込んで、悪戯っぽく笑った。


「電車は無い、他に泊まる所も無い。さあ、どうする? 俺の家に行く?」


……もし拓斗が一人暮らししてたら、ソファで寝るって言うし、泊めてもらうの……かな。


だって拓斗だもん。ほぼ弟のうえに草食男子だもん。


今まで誰ともキスしたことすら無いってことは、安全な証拠でしょ?