お昼のチャイムが鳴るまで
水木先生と音読の練習をしました。
目を瞑っていても言えるくらい
何度も何度も繰り返し音読しました。
「じゃあ先生、明日、約束だからね。
絶対だからね」
「はい、約束」
帰り際、すずめちゃんが差し出した小さな小指に
水木先生はそっと応じました。
るんるんで図書室をあとにするすずめちゃんの背中が見えなくなるまで、
水木先生は廊下の方を見ていました。
「『今、一日のうちのかなしい時なんだ。
つまり、お手紙をまつ時間なんだ。』」
さっき練習した物語の一節を
すずめちゃんは何も見ずにすらすらと口ずさんでいました。
角を曲がったあたりで聞こえなくなった小鳥のさえずりのような声。
ふいに訪れた静寂に
水木先生は少し寂しい気持ちになりました。
読みかけの本を開こうとしたけれど、
ついさっきまで繰り返していた音読の声が
なかなか耳から離れてくれませんでした。
仕方ないので
近くにあったティッシュとセロハンテープで
てるてる坊主を作ることにしました。
