5時間目の図工は「好きなものの絵」がテーマ。
教室に絵の具の人工的な匂いが充満しています。
「できたー!」
すずめちゃんは、自分の描いた絵をぐいっと前に出して周りの席の子たちに披露しました。
画用紙の真ん中で、明るい緑色の太陽がにっこり笑っています。
それを囲む淡いピンク色の空と、色々な形のコットンキャンディーみたいな雲。
「へんなのー。太陽は赤でしょー?」
さっきの女の子がバカにしたように言うと、
すずめちゃんはまたきょとんとした顔で首をかしげました。
太陽、赤かったこと、あるかな。
うーん、とすずめちゃんは考えます。
どれだけ考えても、緑だよなぁ、と思います。
「ジュースみたいだね」
隣の席の真緒くんが言いました。
給食で出たパックの牛乳のストローを、なぜかまだくわえています。
「どのジュース?」
すずめちゃんが聞き返すと、
「メロンソーダと、いちごのやつ」
と、くわえていたストローですずめちゃんの絵から飲む “ふり” をしました。
すずめちゃんはにっこり笑い、緑色の絵の具で
太陽をもう一回り大きくしました。
