────「魔法、使えるの?すごーい!!」
「まだ一人前じゃないけど、俺、もと頑張るんだ」
初めて会ったときから、幼いながらも他の子達とは違うと感じていた。
「先生は、おとうさんなの?」
「いや、先生は遠くにいるから、いつも1人でやってるんだ」
「えー、ご本だけでひとりで?それじゃつかれたりしなぁい?」
「時間はかかるけど、楽しいよ。きみは、学校にいかないの」
強い目を持つ、強烈なまさに好奇心の塊だった。
この子はいつか世界を変えると、そんな気がしていた。
学校を嫌がり、外へ出る方が好きだと言っていた。
「冒険のほうがたのしいわ。学校は、行ってない。おとうさまもかあさんも、まだ行かないでいいって言ってくれてるから...」
アンナー!もう帰るぞー!という声が聞こえてくると、少女は舌足らずな声で返事をし、最後に向き直ってこう言った。
「ちょうど、魔法の本、あるの。魔法つかえないけど、わくわくするから、この本すごくお気に入り」
まだ幼児が持ち運ぶには少々大きい鞄に3冊ほど、大きな本が積められていた。
絵本...にしては分厚いし何よりこの厚い革表紙でわかる。
思った通りだと、根拠なしにそんなことを思った。