「じゃ、痛いところ当たったら教えてくださいね」
頷くのを確かめてから、腹部の上部から下部にかけて同じ強さでぐっと圧迫してみる。
農民の組の長を務めるというおじさんは、下腹部あたりでう、と小さく声を漏らした。
うーん。寒い今の時期も考えると。
「...盲腸の腫れが原因ですね」
「は、はあ......」
「腸の一部です。チーズとか、最近食べてないですよね。だからです」
「それが、冬支度んとき作ったチーズが、もう底を尽いてしもうて...」
「あー......えっと、..ちょっと待ってください、思い出しますから」
なんだっけ、なんだっけ。
チーズ...どうやって作るんだったっけ。
どこかでみたぞ。
何かで見かけたぞ。
─────あ、それだ、思い出した。
「あの...チーズって、ヤギの胃液とかに漬けとくんでしたっけ?」
「へい。でもそのレンネットが、のうなってるんです」