「あはは、ごめんごめん。これからはもっと頑張って作るもんね、...減塩しながら」


少しおどけてみれば、ほら。

こうやって笑ってくれることが増えた。

ふ、って、すごく柔らかい顔をする。


私が減塩とか言うから、その後珍しい南国のスパイスまで手に入れて。

だめじゃん、節約のはずが、本末転倒。


最後に、豆を甘じょっぱく()ったおやつを食べた。

イヴァンによると、昔から、──飢饉の時さえも、人々を救った偉大なお豆なんだって。

「見て見て!この間クロエから頂いた服にね、小さなポケットつけてみたの。目立たないように、うまく出来たのだけど、ほら、こうやって殻むいて入れたら、ぴったり!便利!」

「...入れたことを忘れて一緒に洗濯するのが目に見える」

「わ、ドレス汚れた...。うわぁ...美味しい味、殻にもついてたんだった。馬鹿だ私...」



呆れたようにため息をついて、どこからか湿ったハンカチを出して寄越してくれるイヴァン。


「え、この布どうしたの?...まさか魔法?」

「...拭き終えたら消えるぞ、やってみろ」

「ありがとう、......わあ!ほんとだ、すごい。魔法って、無言でできるの?呪文とか必要なんじゃないの」


ポッケを拭き、手もきれいにすると。

手のひらの感触が薄くなり、驚いてパッと手を広げると完全に消え去った。


「これは単純な魔法だからな、呪文は要らない」


「帰るぞ」と、大きな包みを持った影はスタスタとやはり速い。


私の知っている昔の少年とは、似ても似つかない。


違うと思うのに、モヤモヤするのはなぜだろう...。