そんな私をじっと見つめていた翡翠色の瞳は、古びた店内の小さな印刷機へと視線を移した。
「爺さん、いくらだ。元の値段」
店の奥に入っていく影を見つめながら、ドクドクと脈が上がるのを自分でも感じた。
欲しいものを買ってもらえただけで、我ながら究極にちょろいと思う。
でもこうやって誰かに、本心を剥き出しにされたのは初めてだった。
抑えなさい、堪えなさい、隠しなさいって、ずっとずっと言われてきたから。
例えばかくれんぼしてて、ずっと見つけてもらえないのも悲しいから。
嬉しかった。
「高かったけど良かったの?」
「あぁ、金は使う当てがなかったからな」
「...ほんとに、明日から節約頑張る!」
拳を握って宣言すれば、静かに、と口に人差し指が当てられる。
でもその頬は確かに緩んでいる。
「塩をケチって料理の味が変わらないことを祈る」
「えっへん、任しといてって。...ていうか味、気にしてくれてたんだ」
「...俺にだって味覚はある」


