右手の中指に、何とも深く鮮やかで美しい──ガーネットだろうか──宝石が控えめに輝いている。

いつも肌見放さず身につけているそれは、何年もずっと外さないままだったように表面が少し傷つき曇っていて。

だからか、それとも元々なのか他の宝石とは違う不思議な光を宿しているようだった。


目を逸らせないでいるとさっと手を伏せられ、顔を上げるとイヴァンがこちらをじっと見つめていた。


そりゃそうだ。持ち物をじろじろ見られたら誰だって気分が悪くなるだろう。


でも、何かある気がするのだ。

この指輪に何か大事なことが隠されている気がしてならないのだ。


ごめんと呟き、窓の外を見ようとして、やめた。


「わざわざ付き合ってくれて、ありがとうね」


黒い髪は今度は本から目を離さないまま、あぁ、と唸った。


付き添いはありがたいけど、この調子でちゃんと案内してもらえるのか、少々心配になる。