しまった、またやっちまったと1人ごちる。
聞いても意味ないじゃん、意味ないもん。
この煩さへの後悔はもはや常時だが、それでも気持ちが少しへこむ。
少し気が大きくなっていたと反省する私を一瞥し、イヴァンは素っ気なく答えた。
既に暖かそうな服を纏った男、3つ年上だということは最近知った。
「ああいや、契約だから、だな」
若干、寂しい気持ちを覚えた。
何気なく誰かに触れられた時、微かに尖った爪が掠めていくような。
ここでの生活は充分に慣れてきた。
でも、イヴァンの態度はずっと変わらない。
日によってテンションが変わることはまず無い。
私の料理がどんなに上手くいかなくても怒らないし、素っ気なくて、声を荒らげることも、逆にはしゃぐところも見たことがない。
不機嫌なことも上機嫌な時もない。


