皿洗いを終え、一息つくとちょうど呼び鈴がなった。
初の来客である、アンド、お世話になる。
自分の服か臭っていないか確かめ、頷く。
ここ数日は、風呂に入る前に洗濯、入浴中に干し、出たら全く乾いていない服を着なおし、部屋まで移動。自室で干し下着だけでベッドに入っていた。
流石に裸はまずいかなあって。
でも昨晩はだんだん疲れてきていて、服を貸してほしいと、レディーなりに勇気を出して頼んだが「断る」と言われてしまった。
ま、流石に素性の知れぬ女に自分の服を貸すのは気が引けるな。
...いくらなんでも不躾すぎたか。
良くしてもらっている申し訳なさは、家事で挽回している、と自分で自分に納得させている。
図太さ、身についてきたぞ。
戸を開けると、中年の優しそうな女性が立っていた。
「まあ!こんにちは。お嬢さん」
やはりこの方も、田舎特有の訛りというものが見当たらない、流暢な抑揚である。
「こ、こんにちは。アンナと申します」
恥を捨て拙いフェランドール語をイヴァンに話すのは慣れたが、やはり見知らぬ人だとどんな風に話したらいいものかと戸惑う。