恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~


もちろん、本当の海ではない。



でも、海だった。

天井には鯨の模型が浮き、壁には魚の絵が描かれている。

深海色の壁を泳ぐその小魚の鱗は薄暗い室内でも僅かな光を反射してきらめいている。


幼い男の子のための、みたいなそういうお部屋じゃない。


まるで博物館のような──いや、本当に海に潜ったような──、神秘的などこかだった。



なにこれ、なにこれ。

すごい......

思わずほうっとため息が漏れた。


本の背は茶色とか緑色が多いのに部屋が青いのは、海色のベールが掛けられているからだろう。


多分、魔法だ。

前に本で読んだことがある。

森に溶け込む家、っていう魔法で作られた家の説明と挿絵が描かれていたけれど、それと何となく似ている。


それに、フェランドールには魔術の使える人がとても多いと聞いたことがある。