恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~

方向だけは見失ってはいけないと、近くにあった木の枝で自分の前に方角の印を標す。


当初の予定では、一日歩けば森を抜けられるはずだった。

遠回りしてしまったのだろうか。


じっとりと湿った白金の髪を掻き毟る。

はぁ、と大きく息を吐くと、嫌な気持ちが一緒に出ていったようで、ちょっとだけ楽になった気がした。


まぁ、ともかく少し休憩してから山を下りよう。

その前に、獣の餌食になってたりしないといいけれど......


まるで他人事のように考えながら周りを見回す。


いくらか低くなった視界に小さな煙突が映った。


遠くに家がある。


「......!!」


それを家と認識した途端。

もう足には力が入らないと思っていたのに、もう一度歩ける気がしてきた。


地面に手をつきゆっくりと立ち上がる。


暖かな灯りのともる方へと足を踏み出した。