「...帰ろう」


怒っている...?


実家に、あの学校に連れ戻される、とまたもや身が強張った。


「...どこに」


涙でパキパキしている私の頬をひと拭いした。


「お前の家」

「え、ちょっと、まっ──」

「であり、俺の家でもあるとこ」


「へ?...あぁ、うぅ......」


裏切られるかと勘違いして暴れかけた私をいつかと同じように抱き上げた。

一尺ほど背の高い、その体温がある景色に変わると、ここが汚い場所ってことを忘れそう。




「わたしもう、家事なんてしたくない」

「...順序立てて話して」


「花嫁学校、忘れたい。元の何も出来なかった時に戻りたい...」


「ここは危ないから、帰って話そう」

ぐずぐずと鼻水をすする私をイヴァンが抱えて、よっこいしょと立ち上がる。


「もうほんと、許さない...」

「うん、ごめんな」


ぼろぼろ泣きながら許さないと呟く私にイヴァンも心無しか泣きそうな顔で微笑んでいた。


「ちゃんと...話すから」