ここは、砂漠にぽっかりとできたオアシスのように思えたけれど。


嫌だ。


危険なのは好きではない。

大嫌いだ。



こんな人間など、と、どこか軽蔑していて。

自分が積み上げたものが無意味に思えて、そんな小さなプライドにしがみついている。






────哀れだ




「ぅわああぁん...!...っ、」



あろうことか、わたしは綺羅びやかな汚い街の道の真ん中でうずくまる。





辛い、悲しい、苦しい。



そんな言葉じゃ表せなかった。



結婚、結婚


けっこん、結婚、...結婚。



なんで2度も。



「助けて、」



こんな目に。




「助けてよ.........イヴァン」




わたしはだめだ。



あの髪が見えないと。


あの瞳がないと。




なんで飛び出してしまったんだろう。



「うるさいから始末しろ」



遠くで女が言うのが聞こえた。




好きなら、結婚すればよかったじゃない。


イヴァンが私のことを好きじゃなくても、私がすきなら、...。



結婚すればよかったじゃん、何も思ってなかったらともかく。





そのちっぽけなプライドなんて。


捨てられればよかった......




そのまま知らない男たちにつまみだされ、わたしは光の外側になった。




襲われないていて無事でほっとするなんて、微塵も思えなかった。




イヴァン、イヴァン。



こんなことになるなら、




「アンナ」



幻...


幻聴



「アンナ」




「...うわぁ...ん......」





「ごめん、アンナ。...すまなかった」



街から抱え出され放り出され、そのままだった私のとなりに。


誰かが屈み込む。




その翡翠色の瞳は、ずっとずっと求めていたものだった。