知ってるイヴァン、知らないイヴァン。

無言で黙々とご飯を食べるイヴァン、目がギラギラの怖い誰か。

ご飯を作ってくれた人と、つれない態度と、拒絶された声。


もうなにがなんだか、わからなかった。



憎くもここで──この屋敷で養生された自分の感性。

それを無視しないで、ちゃんと耳を傾けたから私は出ていく。


心も思考も、身体もへとへとだ。




何も要らない。

身一つでここに来たんだもの。

荷造りしたところで持ち物なんてはじめから無い。


本当に何も持たず、家──じゃない...、大きな屋敷を出た。


一度も振り返らないと、固く決めて。