「…うん」




驚いて、思考が停止する。




「じゃあそれ、俺にくれようとしてたの?」


「うん…。でも、勇気が出せなくて、それで…」


「泣いてたの?」




うっと言葉に詰まった初音さんが、頬を赤くしながら顔を隠した。


その姿があまりにも可愛くて、そっと手を掴み解く。




「改めて、初音さんのことが好きです。俺と、付き合ってください」


「…はい」




涙で潤む初音さんの瞳を見つめて、十年越しの告白をする。



そして、夕日が差し込む靴箱で、初音さんの唇にそっと自分の唇を重ねた–––。