その2


”日本の女性が持つポテンシャルは世界一だっての!なのに、この国の若いオンナはなんでこうも通り一遍の暗黙な既定レールに甘んじてるんだ‼平凡に甘え、ニコニコしながら人並みの最小到達点で二度とない人生を終える…。もったいないって‼”

その恵まれた天性の知と体躯、そして敗戦後、敵地の海外で一財を成した両親を持つ好境遇…、それらすべてを以って、人種の坩堝たる本場アメリカ西海岸で思春期まで天真爛漫をはばからずガンガン突っ走る…。
そして、泰然たるオーラをプンプン漂わせて都県境に”帰ってきた”彼女は、理知に富む壮大な視点の下、一大決起に着手する。

後に”赤塗り”として東京埼玉県境一帯に広く深く根付いてゆく、彼女のドラスティックな行動は、この地の女子中高校生を一斉発熱させ、やりたいことを誰の遠慮なくやれる勇気を持つという、既成概念の縛りから自己を無意識に開放できないでいた少女たちの頑なな栓を一気に抜き放ち、一大ムーブメントを形成していったのだ。

その現代に舞い降りたジャンヌ・ダルクこそ、この地で怪物の名を言わしめることとなる紅丸有紀だった…。


***


有紀の赤塗りムーブメントによる肝は、自己突破…、ここをキーロードとしていた。
すなわち、少女たち一人一人がやりたいことをやる上での障害、妨害の壁は誰に頼るではなく、自分らでクリアするという行動原則を前提としていたのだ。

行きつくところは、力によるプレッシャーには力を以って突破する…。
あくまで等身大、オンリーワンのもとで…。

その上で、有紀は発熱した少女らの旗振り役として、いざという勝負となれば力の行使をいとわず、前に出る強靭さを絶対必需として捉えた。
その前に立ちふさがるものが屈強な男の集団であろうとも…。

そして、彼女が私立清澄総合高校に進学すると、力自慢と武勇に富んだとびっきりの豪女たちによる武闘女性集団、紅組ーべにくみーを結成するのだった…。