その2
麻衣



「そこで尋ねるぞ。週末の集会、なぜ事前に許可を取らなかったんだ?」

早速、荒子総長からの聴取が始まった

もっとも、私にとっては南玉トップとの”談判”になる

滅多にない機会だからね

食らいついてやるさ、ヘへ…

...


「許可を求めても得られないのは、明らかでしたから。それは、すでにご承知のことと存じますが…」

「いちいち挑発する野郎だな、お前…。まあ、そういうことなら、真澄先輩の証言をそのまま受け取ろう。そこでだ、そうなれば一つだな…。で…、メンバーを切ったのは、とりあえず置いとく。加えた方だ、問題は。東京もんなんじゃないのか、そいつ?」

この人、ホント効率がいいや

そこ、突いてもらってうれしいよ

「ええ、今通ってる高校は東京です」

「認められないだろ、それじゃあ。ダメだ。そいつ、お引き取りだ、いいな?」

「お言葉ですが、腕の立つ実力者なんです。津波祥子という女です。これから”他”を伏せて行くには、欠かせない戦力なんです」

「それでもダメだ。東京もんとは波風起こさないことが、礼儀だ。それやっちゃったら、これからのこと、何も実らねえんだよ!わかってんだろうが、てめえもよ!」

「それなら、クリアできる状況を作ります。それで、承諾をお願いします。走りの布陣を一気に充実させますよ。その対価で考慮して欲しいんです」

「じゃあよ、逆に聞くぞ。何をどうクリアするんだ?」


...


よし、ここで畳みかけてやる!

「埼玉の高校に転校させます。亜咲さんも自宅は東京でした。これは従来から問題なしでしたから、今回も筋は通ると思います。それと、津波は元々フリーの立場ですし、東京もんとの軋轢は最小限で留まるはずです。対外的にも、弱かった”走り”を強化する姿勢が発信できます。総長の目指す方向にはプラスになります。なので、一度会ってください!」

私は必死で訴えた

自分でも、健気な私の姿勢が、しゃべっててはっきりイメージできたし

総長は黙って私の顔を見ているよ

矢吹補佐といづみ軍曹も、ずっと私に視線を送っている

とはいえ、軍曹さんは眉間にしわ寄せて、不快そのものって目だけどね(苦笑)

さあ、新執行部はどう出る…