その12
麻衣



正直、意識はもうろうだ

だが、私は今日の”目的”には貪欲だった

荒子総長の私へのリアクションを、果たして、”あの人”がどうのような目で見ているか…

”あの人”は、表情一つ変えていなかった

折り畳みの椅子に座ったまま、ほとんど動かず、口も挟まない

矢吹総長補佐は一体、私をどの程度知ってるんだ

あっこ先輩は、相川からほぼそのまんまを聞いてて、そのまんまの表情で私に接してくる

だが、あなたはわからない…

私をどう思っているの

荒子さんと歩調を合わせるのは、私を叩くためなんですよね?

その沈黙、いつまでですか…

結局、矢吹補佐はここでも動かなかった


...



「本郷、私の鉄拳はたとえ潰れようが、力の限り行く。それでもの覚悟あるんなら、人の肩なんか借りてねえで、こっちに並べ」

ほー、さすが狂犬さん、厳しいお言葉だ

では…

「久美、もういい。どいてろ、二人とも」

私は二人から離れ、ふらつきながら、旧親衛隊のメンバーの隣に並んだ

「お前、どけ、あっち行ってろ!」

私は、ドッグスの新村静美の腕を掴み、その体を”列”から退けた

「麻衣さん、もう無理です!私が受けますから…」

静美は肩で息をしている私の体を両手で支え、たしなめてくれてる

「うるせー、引っ込んでろ!」

そんな優しい同僚を、私は右の肘で吹っ飛ばしちゃった

「麻衣さん!お願いだから、もうやめて!」

片膝をついた静美は泣き出して、そう叫んでた