その13
夏美



集会中の掴み合いについては、私といづみでトラブルの経緯、双方の言い分、さらに周囲の証言を述べたわ

結果、ドッグス側が先に挑発したのは間違いない

親衛隊の証言によると、他にもちょっかいを出されたメンバーがいたそうだし

いづみが言うには、親衛隊のメンバーからは、再度テント設営での訴えが出たということだ

「テントの件も、親衛隊連中はドッグスの抜け駆けだと疑っています…」

そうなれば、真澄とドッグスメンバーとの詳しいやり取りの検証が必要になる…


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「真澄先輩にはその辺のところ、伺ったんですが、私が聞いたとおりで報告しても主観が入るかもしれません。なので、真澄先輩には改めて、皆さんの前で直接証言してもらおうと思うんですが、いかがですかね?」

「私も真澄には細かい経緯を、ここで全員に公言してもらった方がいいと思います」

私はあえて、証言という言葉を使わなかった

そして、全員の賛意により、真澄をテント内に呼ぶこととなった


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真澄の証言によると、一昨日街で会ったドッグスのメンバーは北田久美一人

他に連れはいなかったそうだ

向こうから声を掛かられ、当然総集会の話となった

各部隊から3名ずつということも、そこで話が出たというわ

そうなると、ドッグスから6人を出したのは、彼女らの勘違いではないだろう

ドッグス側の言い分を鵜呑みにすれば、”善意”からの人員補充となる訳だけどね

「真澄、北田はその辺の言い含みはなかったかしら?今回、迷惑をかけたから人を多く出すとか…」

真澄とドッグス、いや、本郷とのホットラインはすでに疑う余地がない

私は、まるで検事みたいな口調になっていたわ


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私は真澄の様子を注意深く探ったわ

「人を多く出すとかは、全く口にしてなかったわね。ただ、赤隊に危害を加えた当事者という責任はやっぱりね、感じてたみたいよ。相当強くね。その一方で、親衛隊には負けたくない、外様だってバカにされたくないって言う意地みたいなものもね、言葉の端々で感じたわ」

真澄は特に私を勘っているような素振りは見せず、さらっとした話しっぷりだった

「まあ、ここまで聞く限りでは、今日の6人というのも必然性はあったと言えますけどね。でも、その申し訳ないという気持ちは、南玉全体に対してでしょう。親衛隊にはむしろライバル心、もっと言うなら敵愾心の方が強かった。ドッグスの執拗な挑発行為は客観的に見れば、その延長とも考えられますよ」

みんなは頷きながら聞いてるわ

真澄もすました顔で頷いてるし…


...



私は結論に入った

「従って、テント設営での人員変更は悪意によるもので、ドッグスが親衛隊連中を挑発した。向こうの出方次第では叩こうという野心も垣間見える。少なくともこの件に関しては、親衛隊3人の言い分の方が説得力ありますよ」

これに対して、まず土佐原OBから発言が出た

「俺から一言言おう。大事なのは、次代の南玉を託す彼女らに、内部対立を起こさせないための対処であることだ。決して決めつけはよくない。かえって禍根を残す。はっきり言って、夏美の意見は客観的だとしても、推測の域を出ない。今日、いきなりその方向に持ってくのは抵抗があるな」

それを受けて、甲斐OGからも同様の意見が出た

「私も同感ね。ドッグスの背伸びは私たちが抱きしめるくらい、許容の姿勢を持たないと…。年長者からするとそうなるわ。やはり、今の時点ではね。達美はどう?」

このお二人の言うことは、もっともだと思う

達美とて、それは同じだろう

さて、その上で、その達美からはどういう言葉が出るかな…


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「私は夏美と一緒です。ドッグスは確信犯だと思います。無論、推測です。でも、今日の挑発行為は度が過ぎる。意図を感じる。そう言わざるを得ません。その上で、我々がどう構えるかです」

結局、ここらが世代ギャップってことなのかしら

「よし、今の4人の意見をかみ砕いて結論を出すのは新執行部の3人だ。後は任せよう。これでいいな?」

ここで再び土佐原OBが、荒子と鷹美の方を向いてこう言った

「はい…」全員がそう呟いてる様子だったが…

「ちょっといいですか?」

ここで挙手したのは、新たな南玉のナンバー2である鷹美だった