照明が、まだ完全には戻っていなかった
黒と白のあいだみたいな光の中で ステージだけが“現実から切り離されている”ように見える
観客は息を潜めていた
さっきまでのざわめきが嘘みたいに消えている
(……来る)
私は、なぜか確信していた
千華さんの時とも違う 友莉華さんの時とも違う
これは“勝負の空気”じゃない
もっと深いところで、 何かが“終わりかけている音”だった
その瞬間だった
カツン
音がした
一歩
……たったそれだけなのに
空気が、裂けた
カツン
もう一歩
ステージの奥から “何かが近づいてくる”のではなく
まるで……
世界そのものが、その音に合わせて動いているみたいだった
観客「……え、今の誰?」
誰かが小さくつぶやく
でも誰も答えられない
照明が追いついていない
“姿より先に存在だけが届いている”状態だった
そして……
光が遅れて、落ちる
そこにいたのは
平井華那さん
立っているだけなのに圧が違う
千華さんの“完成された強さ”とも違う
友莉華さんの“支配する強さ”とも違う
これは……
壊れないはずのものが、 ギリギリで形を保っている強さだった
華那「……やっと」
その一言
なのに、空気が沈む
(え……?)
観客の反応が一拍遅れる
華那は笑っている
でもその笑顔は、 “安心している笑顔”じゃない
むしろ逆だった
「ここに来れてしまったこと」に少しだけ驚いている顔
華那「遅いよ」
その言葉は誰に向けたものでもないようで
でも確実に “この場所そのもの”に向けられていた
その瞬間……
ほんの一瞬だけ
華那の目が揺れた
(……今、揺れた?)
錯覚じゃない
圧倒的な存在感の中に ほんの小さな“ひび”が見えた
華那は一歩、前に出る
カツン
そのたびに ステージが“耐えている”ように見える
華那「私はね」
言葉が途切れる
一瞬だけ、呼吸が乱れる
でもすぐに戻る
華那「……負けるために、ここにいるわけじゃないよ」
(強い……)
そう思った瞬間
また、揺れた
今度は確かに
強さの中に、 ほんの少しだけ“迷い”が混ざっている
華那はステージの中心を見上げる
まるでそこに “何か答えがある”みたいに
華那「でも……」
小さく、声が落ちる
華那「なんでだろうね」
その言葉のあと
一瞬だけ、沈黙が深くなる
観客も、私も何も言えない
華那は笑う
でもその笑いは さっきより少しだけ、弱い
華那「……まだ、終わってない気がする」
その瞬間
ステージの奥で
“イノチノウタ”の断片が ほんの一瞬だけ鳴った気がした
(……まただ)
心臓が跳ねる
華那はその音に気づいているのか、いないのか分からないまま
ゆっくりと目を閉じる
そして、開く
華那「……じゃあ、始めようか」
今度の声はもう迷いじゃない
でも完全な確信でもない
その“間”だけが異様に生々しかった
照明が落ちる
音楽が、まだ来ていないのに
空気だけが先に戦いを始めていた
そして…
初代B4や初代E4、STARやVanpaires
萩花と珠凛、ダイヤと彩雫華、愛桜が見守る中…
音楽が走り出す

![アイドル学園〜ステージに咲く美しい花〜 [完]](https://www.no-ichigo.jp/img/member/1082306/swt8bhm8ap-thumb.jpg)