私はチョコレートが苦手だ。
嫌いでは無い、苦手なのだ。
カカオの香りはとても好きだし、舌触りも滑らかで好き。
「じゃあなんで苦手なの?」
友達に話すと必ずそう聞かれる。
当たり前だ。私の感想は一般的にチョコレートが好きな人が口にする感想だ。
「何となく苦手なの。」
そう答えると友達はそっかーと言い深くは聞いてくることも無い。
“なんで苦手”…か。そんなの決まりきってる。
「おはよう綾瀬!」
「梨花ちゃんおはよう。」
あぁ…これだ。
「おはよう。南、沙耶。」
まるでカカオ100%のチョコレートを一気に摂取したかのような、どろどろとした苦いものが私を埋め尽くす。
「相変わらず仲良いね〜!」
一気に広がったチョコレートに誰も気づくことはなく、周りは今にも口笛を吹きそうな勢いで2人を冷やかす。
途端に2人の顔が赤く染まり、まるでミルクチョコレートを塗りたくったような甘い雰囲気が立ち込める。
私とは真反対。甘さなんて知らなければチョコレートの苦さになんて気が付かなかったのに。
嫌いになりたいのに、1度味わったらもう忘れられない。
だから今日も私は、
「…ほんとに!毎日甘いね〜。」

チョコレートが苦手だ。