いつもよりも30分も早く登校したら、家から学校までの道中も、昇降口に入ってからも、全くと言っていいほど誰とも出会わなかった。

やっぱり、あたしの読み通り! 

というより、昨日の夜は緊張してなかなか寝付けず、今朝も早くに目が覚めちゃっただけなんだけど。

口元に自嘲の笑みを浮かべながら、誰もいないことを確認して3年生の下駄箱スペースにこっそりと侵入する。

えっと、何組だったかな……。

端からひとつひとつ見て回って、ちょうど半分くらいを確認し終えたところで、あたしはようやく、お目当ての人の名前を発見した。


麻野(あさの) 達樹(たつき)

小学校からの幼なじみで、あたしのひとつ上の先輩だ。

彼と一緒の高校に通いたくて、頑張って勉強して追いかけてきたけれど、あと1ヶ月もしないうちに、先輩は卒業してしまう。

だから今年のバレンタインは絶対、先輩にチョコを渡したかった。