コノハナサクヤヒメが植物を操ったように、スサノオノミコトは水を操る。



咲耶との一戦で、自身を霧状にし、大量の水を生み出した感覚はまだ残っている。

家族が寝静まった夜。

私はお風呂に浸かりながら、イメージした。


人差し指をたてて、その先から水飲み場のように噴き出す水。

しかしなにも起こらない。


試しに同じ指先にマッチほどの火を灯し、すぐ消火した。

うん、これはできる。


ここで疑問。

まともに水を操れない私は、本当にスサノオノミコトの生まれ変わりなのでしょうか。

妹がコノハナサクヤヒメなのは間違い無いでしょう。


あれだけ植物を自在に操っていたのだから疑うまでもない。

生まれ変わりを見つけるのは難しいと言っていた。

それなのに、こんな近くに2人も存在するなんて、都合が良すぎるといいますか。

火宮父の勘違いと考える方が自然でしょう。

五寸釘に襲われた時、なにもできなかったじゃないか。

練習でできないものが本番でいきなりできるようになるものか。


あれは一度きりの奇跡だったのだ。


使えない能力を当てにするのはやめよう。

一握りの者しか、式神使いは術師にはなれないのだと、火宮桜陰に初めに言われたことだ。

それでも、やってみなきゃわからないと、両立を目指して今日までやってきた。

しかし結果は、焚き火止まり。

海の神だから火炎の術が使いづらいという言い訳も通らない。


…………もう、潮時なのだろうか。


焚き火は焼きマシュマロ専用で。

戦いは、おとなしくイカネさんを呼び出して、命令して、自分は安全なところで眺めて………。

なんて、やっぱりそんなのは嫌だ。

私はイカネさんと対等な友人でありたい。

本人にもそう宣言した。

でも現実は甘くなくて。

かといって、強くもなれていない。

私に伸びしろはあるのだろうか。


そもそも、火柱をたてる術をつかって焚き火しかできないわけで……。

けれど、もっと威力のある術を使えば、込める霊力の量を増やせば、焚き火以上の火が出せるかもしれないし。

でも………。



同じ所をぐるぐると考えていたら、いつのまにか眠ってしまったらしい。

翌朝、冷たい湯船で目を覚ました私は、見事に風邪をひいていた。