内容はこうだ。
この学校の2年生に、火宮桜陰という学校一イケメンな先輩がいる。
その彼がある日の放課後、そのおまじないをしているところをクラスの女子が目撃する。
何やってるのか問い詰める女子。
イケメン先輩は言う。
「神様を呼び出す儀式をしていたんだ」
普通なら馬鹿にされるようなことが認められるのは、さすが学校一のイケメンだ。
それを女子が真似て、イケメン先輩との会話が生まれた。
女子と話したさに、男子もそれを真似た。
共通の話題があれば、会話も出来る。
こうして、好きな人と話せるという噂が広まったわけだ。
まあ、あくまでも噂で、どこまでが本当のことか、私に知る術はないのだけど。
流行っていることは事実。
関わる事はないだろうイケメンに興味はないが、好きな人がいる訳でもないが、話題作りになるというのなら。
私は噂に聞いた通りに儀式を行った。
白い紙に、シャーペンで五芒星を描き、頂点を結んだ五角形で囲み、その周りを丸で囲む。
しかしなにも起こらない。
………………いいもんね。所詮は噂。
好きな人もいないし、神様なんて非現実的な事起こるわけないって、知ってたもん。
知ってたけど、裏切られたような気持ちになりながら、片付けに入る。
「った!」
うっかりシャーペンの先で指を刺してしまった。
折れた芯を抜くと、ぷっくりと血が溢れ出す。
不運だ………。
流行りに乗せられた私を天が笑っているようではないか。
手近にあった、魔法陣を描いた紙に血をなすりつける。
どうせ捨てるものだ。
ティッシュ代わりに使ったところで構うまい。
ぐりぐりと指を拭いていると、その紙がぽぅと光った。
……発光する紙を使った覚えはないのだけど。
しばらくすると光は収まる。
「ご主人様、ご命令を」
正面に美女が立っていた。


