彼が近づいたときに漂った甘い匂いにくらっとする。
勝手に酔っていると、彼は手際よく掲示板にポスターを貼っていて。
背の高い彼がやると、わたしの何倍も早く終わっていた。
……助けて、くれたのかな。
彼は綺麗に貼り終えられた掲示板を眺め、満足そうにうなずいている。
まさか手伝ってくれるだなんて思ってなかったから、お礼を言わなきゃと焦る気持ちに駆られ、なんとか声を振り絞る。
「あの……っ、ありがとうございます」
あの阿久間くんが間近にいることが未だに信じられない。
おかげで直視できないし、お礼を言いながら頭を下げることで精一杯だ。



