「じゃあ、授業遅刻すんなよ。恭平」
「んー、がんばる」
覇気のない恭平くんの言葉に呆れながらも、最後にわたしにウインクをしてから、長谷川くんは屋上を出て行った。
数秒の沈黙が訪れる。
なかなかに気まずい空間になり、うかがうように恭平くんを見る。
彼はさっきと変わらずフェンスの外を眺めていて、彼の視界にわたしが入っていないのが寂しいと思った。
「……ねえ、恭平くん」
「なに」
「あの、怒ってる……?」
「ふつう」
会話が成り立たない……!
なにかに怒っているのは確実だけれど、どうしたらいいかはわからない。
長谷川くん関係なのは確かだと思う。
やっぱりヤキモチ妬いてるのかな……、と期待する反面、ないないと勢いよく首を横に振る。
彼の瞳には、いまなにが映っているんだろうなあ……。
わたしを見てほしい、だけどそんなこと言えない。
ひとりで百面相するわたしに気づいたのか、恭平くんはいつもより冷めた瞳でわたしを見て言った。



