あくまくんが愛してやまない。




わたしたちのほうは見ず、フェンスの外の景色を見ながら、恭平くんは言葉を放った。



「まあね」



たった3文字だったけれど、それにすべてが詰まってる気がして、わたしには充分だった。

長谷川くんもその返答に満足したのか、扉のほうへ行こうと一歩踏み出した。



「てことで、俺は退散するわ」



もっと話せると思っていたから、帰ろうとする長谷川くんを思わず引き止めそうになる。


でも、さっき恭平くんに言われた浮気という言葉が思い浮かんで、手を伸ばすのはやめた。



なんでもお見通しのように、長谷川くんはわたしの目を見て笑う。



また話そうね、と言われ、こくりとうなずいた。

うわさどおり話しやすいなあ、と思いながら彼の背中を目で追いかける。