あくまくんが愛してやまない。




「加世、それわざと?」



急に脈略のない言葉がぽんっと発せられ、思わず恭平くんを見る。

彼はまったく笑ってなくて、わたしのことなど視界に入れずに、長谷川くんをじっと見ていた。



あの……、一気に空気が凍ったのは、気のせいだよね?


恭平くんに対して長谷川くんは、少し肩をすくめて、呆れたように言う。




「やめてよ。意地張ってないで、彼女のこと可愛いって言ってやればいいのに」



いやいや、長谷川くんから言ってもらっただけで昇天です……だなんて心の中で思う。

恭平くんが万が一そんな言葉言ってくれたら、きっと鼻血出して卒倒してしまうだろうし。



まったく期待していないわたしは、のんきにそう思いながら、いちごみるくのストローを咥える。


美しいふたりをぼーっと眺めていると、まじめな顔をした恭平くんが長谷川くんに言った。




「ちがう、そこじゃない」


「ん?」


「みゆうちゃんのこと名前で呼ぶの、腹立つからやめて」