あくまくんが愛してやまない。





少し空が茜色になってきた頃、恭平くんがわたしに言った。



「屋上行かない?」



たくさん回れて疲れていたわたしは、もちろんとうなずく。



久しぶりに訪れた屋上は、文化祭から少し世界観が違って閑散としていた。

そんな静かな空間が居心地いい。



フェンスに寄りかかる恭平くんと同じように、わたしもとなりに立つ。



「去年の文化祭は、こんなことになるとは思ってもなかったなあ……」


茜色の空を眺めながら、思わずそんな言葉をこぼす。



となりに恭平くんがいることも、関係性がはっきりしていることも。

ぜんぶ、わたしにとってはイレギュラー。



信じられないくらい幸せで、こんなのいまだに夢じゃないかと怖くなる。