だって、そんなの、わたしを選んでくれた恭平くんに失礼だから。
……好きって、言ってくれたもん。
にやにやしながら前を向いて歩いていたら、突然、恭平くんがわたしのほうを見た。
えっと思っていたら、彼はわたしと握っていた手をいったん離し、向き直る。
「ど、どーしたの……?」
彼の一挙一動に、ギャラリーの視線も動く。
歩いていた足を止めて驚いていたら、恭平くんはわたしの頬にちゅっとキスをした。
「きょーへいくん?!」
な、なにするの?!
びっくりしてほおを抑えて抗議すると、恭平くんは、べっと舌を出して意味ありげに笑う。
途端にきゃあああっと悲鳴が上がった女の子たちの声なんて聞こえてないとでも言うように、彼はわたしの手を再度握った。