ぽんぽんと交わす会話が心地よい。
糸原は控えめに笑うからか、目尻が下がる癖がある。
そんなことも気付いていたくらい近くにいたのに、彼女の想いには気づかなかった。
なんだか悔しいような変な気持ちになって、そんな自分に苦笑する。
「俺、たぶんいま保志と顔合わせても、笑える自信湧いてきた」
「それはよかった」
「ちゃんと前に進めると思う。ありがとう、糸原」
「別になんにもしてないよ」
となりに糸原がいるのが、違和感がぜんぜんなくて。
このまま彼女のことをもっと知っていくたびに、胸が高鳴るんだろうと思う。
「あと、着物似合ってる」
本音を伝えてやれば、糸原は照れたように目尻を下げた。
「沢内も、着ぐるみ似合ってるよ」
「おい、それは悪口だよ」
「うそうそ。いつもカッコいいから大丈夫」
「……ツンデレか素直かどっちかにしろよ」
ふと天を仰ぐ。
さっきまで憎たらしかった晴天が、いまになって見るとすごく爽やかに見えたのだった。