それはズルくないか。
と、勝手にドキドキする。
糸原って、こんなに可愛かったっけ。
いままで見えてなかった部分が露呈して、心臓が誤作動を起こす。
「じゃ、俺もそんときはエミって呼ぶわ」
「……期待するからやめてよ」
「ふは、ツンデレも悪くねえな」
「沢内のバカ」
赤くなっている糸原を見たら、さっき失恋したことなんか忘れてしまいそうだ。
心に残る傷は、糸原によって癒やされているのは確実だった。
いままでの関係とは違ったはじまりを予感するように、俺の胸が高鳴る。
「この焼きそば、沙羅にあげることにするわ」
「いいじゃん。きっと喜ぶよ」
「このお姉ちゃんに買ってもらったんだよって自慢してやる」
「子どもみたいなことしないでよ」



