そう微笑んだあと、ふと糸原が俺に視線を向けてくる。
「そういえば、沢内って要って名前だっけ」
「……そーだよ。保志のおかげで名字ばっかり浸透してるけどな」
沢内要。
名前はけっこう気に入っているけど、呼んでくれる人は少ない。
前までは保志に『沢っち』と呼ばれるのが好きだったけれど、そんなことを言える立場じゃなくなった。
そんなことを考えていたら、糸原は片眉をあげて言った。
「沢内がもしわたしのこと好きになったら……名前、呼んであげるよ」
「え」
「……なんてね」
「なんか糸原って……」
「なによ」
「ツンデレ?」
「……そんなんじゃないし」



