途端に早口になる糸原を凝視する。
うそだ、と最初は理解できなかったけれど、彼女の顔を見たら妙に納得できてしまう。
だって、いつもの糸原と違って、照れたようにそっぽを向いていたから。
結いあげている髪が、彼女の表情をさらす。
糸原の耳が赤いのを認識すると、なぜかこっちがドキッとしてしまった。
「いやあの……、いままで気づかなくて、ごめん」
「……やめてよ。沢内の恋は本気で応援してたんだから」
「なんで糸原って……、そんないいやつなんだよ」
俺だったら、好きな相手の恋なんて、応援できない。
相手が俺じゃないだなんて、耐えられない。
それなのに、糸原はどこか遠くを見つめて、なんともなさげに言うのだ。
「沢内がみゆうを見ている横顔に、惚れちゃっただけだよ」



