あくまくんが愛してやまない。




だんだんと近づいてくる歓声。


急に騒々しくなった廊下の声を聞いてから、わたしとエミはそろって目を見合わせる。



「なんだか嫌な予感するのわたしだけかな……」

「ううん、わたしも……」



あはは、と苦笑いが止まらないわたしたちの予感は、奇しくも的中。



「あくまくんじゃん!」

「ほんとだ! うちの階じゃないのになんでいるの……?!」

「やっばい、まじでかっこいい……っ」



きゃあきゃあ言われながら、やって来たのはうわさの恭平くん。

言い寄ってくる女の子たちはまったく見ず、彼はわたしたちの教室の窓から顔を出した。



おかげでうちのクラスも黄色い声に包まれる。

どこまでも有名人で人気者の彼の登場は、すごくすごく目立つということを、本人は気づいているのだろうか。