「まあ、みゆうがいいなら、わたしもなにも言わないけど」



困ったように言うエミ。

その言葉の裏に寂しさが灯っている気がして、彼女に衝動的に抱きつく。



「彼氏ができてもわたしはエミがいちばんだからね!」

「やばい、急にみゆうに置いていかれた感ハンパないんだけど」


「いや、エミには元カレがいるけど、わたしははじめてだからね……?!」


なにをおっしゃる!と憤慨する。

鼻息を荒くするわたしに若干引き気味のエミの顔を見ると、急に現実に戻ってきた。




「いやでも、本当に彼氏なのかな……」



ふと考える。

昨日の出来事がたとえ幻ではなく、現実だったとしよう。


相手はあの恭平くんだ。

自分のことを好きなわたしを単にからかっただけで、付き合う気はさらさらないなんてこと、ありえなくはない。


というか、そのほうが真実味がある。


かなりショックなことだけれど、もしかすると、逆にそのほうが助かるかもしれない……。