「俺がもう少し早く告ってたとして。それでも保志は、俺じゃなくて阿久間を選んでただろ?」
思わず言葉に詰まる。
看板を塗る作業を忘れて、手が止まる。
彼の言葉を反芻し、自問自答を繰り返した。
答えなんか決まってるのに、即答できてしまう自分が後ろめたくて、迷っているような表情になってしまう。
沢っちの気持ちをわかっても、本音を知れても、わたしの頭の片隅には違う男の子がいるのだ。
「……うん」
こくりとうなずいたわたしの頭に、沢っちはぽんっと手を置いた。
その温かさに沁みて、唇をぎゅっと引き結ぶ。
「保志。俺さ、文化祭までがんばっていい?」
わたしのほうを見ず、教室の真ん中を眺めながら小さく沢っちは聞いてきた。
いつもの声の大きさじゃないことに、心が揺らぐ。
わたしをなんでこんなに想ってくれるのか、不思議でたまらなくなる。



