「おーい、保志! こっち来いよ」
いつのまにかぼーっとしていたわたしに、聞きなじみのある声がかけられる。
振り返ると沢っちが教室の隅で手を振ってくれているのが見えた。
慌てて沢っちの元へ行くと、彼はしゃがんで看板の色を塗る作業をしていた。
「ぼーっとしてたけど、大丈夫かよ」
わたしのほうは見ずに、色を塗ることに集中して尋ねてくる沢っち。
よく周りが見えていて、他人に気を遣える。
……心配、させちゃったかな。
思いやりがあって優しくて。
そんな彼の言葉に、じーんと心が温まった。
「うん! ぜんぜん元気だよ」
「……そーかよ。じゃあ、これ手伝って」
「あ、コキ使おうとしてくる! 担任といっしょだ!」
「うるせえよ! 担任と同じとか不名誉だよ!」
「……あ、沢っち。担任来た」
「オワッタ」
「うそだよーん! 沢っちって、ほんと単純!」
「〜〜保志にだけは言われたくねえよ!」



