「ほんっと……好きでもない相手にキスなんかしねえよな」
ひとりごとのように呟くと、俺の言葉に加世が苦笑しているのが見えた。
「お前なあ……それ、俺じゃなくて本人に言ってやれよ」
「どうする、これで愛想つかされてフラれたら」
「お前みたいなやつは一回痛い目見ないとわかんねえんだってことじゃん」
「……正論」
あはは、と珍しく軽やかに笑う加世。
俺がムスッとしているのでさえ、なぜかおもしろいらしく。
「保志ちゃんなら、わかってくれるよ。きっと」
「……どうかな」
あー……どうしよ。
みゆうちゃんに会いたくなってきた。
でもちゃんと本音を伝えないと、愛想尽かされて逃げられてしまう。
いまは文化祭の準備で忙しいだろうから、あまり何も言わないほうがいいかもしれない。
こういうときに、……沢内くんがみゆうちゃんの近くにいるのが嫉妬心を煽るよな。