俺もだれかを本気で好きになることなんてなかったし、これからもないものだと思ってた。
だけど。
旧校舎で、落ちていた生徒手帳を拾ってから、冗談でもなんでもなく世界が変わったのだ。
なぜあの日、ひと気の少ない旧校舎に来たのかというと、いつも女の子に追われたときの逃げ場だったから。
よく来ていたから、その日も変わらず旧校舎の廊下を歩いていたんだけど、落ちていた生徒手帳を見てかなり驚いたのを覚えている。
最終ページに、去年の文化祭で撮ったであろう、俺と女の子のツーショット写真が挟まれていたから。
去年の文化祭は、女の子たちに揉みくちゃにされていたから、だれとツーショットを撮ったかなんて正直まったく覚えていなかった。
でも、この子だけは、なぜか記憶に残っていたのだ。



