あくまくんが愛してやまない。




「わたしは恭平くんが大好きだから……っ、こんなの、もう後戻りできなくなっちゃうよ……っ」




涙がこみ上げ、ぽろりと落ちる。

それが雨で濡れた地面と同化して、わたしの存在がちっぽけなものだと知る。



好きな人からのキスは、嬉しいものだと思ってた。

甘酸っぱくて、優しい味がするんだと思ってた。



それなのに……どうしてこんなに辛いんだろう。



ズキズキと痛んだ冷たい胸が、熱の灯る唇の温度を奪っていく。




「からかってるなら、……っこんなことしないで」




身勝手なのはわかってる。

身の程知らずなのもわかってる。


恭平くんのかりそめの彼女でいる以上、そんな贅沢言ったらだめなのに。


めんどくさい女に、……なっちゃったじゃない。