「これ、どういうこと?」
はたから見れば、この状況は壁ドンにでもなるのかもしれない。
少女漫画の胸キュンシーンにでもあるような画。
しかし、現実はそう甘くない。
たったいま、今世紀最大の危機に陥っているといっても過言ではないのだ。
「いや、その……これはですね」
目の前には、ずっと近くで拝みたいと思っていた端正なお顔。
切れ長の瞳に薄い唇。
くっきりと見える美しいフェイスライン。
スッと通った高い鼻。
サラサラの黒髪をセンター分けにしているため、よくお顔が見える。
こんな真近で見ても、とても綺麗な容姿に思わず見惚れてしまうけれど。
そんなことをしている場合では、断じてない。
とんでもない美形な男の子に追いつめられ、逃げ場がない。
どうしてこうなったのか。
それは、5分前に遡る。