その9
夏美
少しして、南部さんと私は1階のリビングに下りた
「南部さん、これって…」
「ああ、岩本真樹子が出張って来てるんなら、”それなり”の背景ありってことだろうな…」
「私、体中の血が逆流してるわ。今すぐにでも岩本を叩きつぶしてやりたい」
「落ち着けよ、夏美。ここで熱くなったら、”奴ら”の思惑通りだ。ここは冷静にならなきゃ、本質を見逃すぞ」
「あなたは、つくづく偉いわ。その通りよ。だけど、卑劣極まりないわ。汚すぎる!」
「…いいか、お前も頭の中じゃ”薄々”だろうが、昨夜の仕掛けはテツヤ達二人を引き離す目的だけじゃない。いわば、それを表に掲げて、ケイコちゃんを獲物に仕立てたのかもしれない…。それと…」
「なに…?」
...
「テツヤが言ってた5人の男達、愚連隊系じゃなさそうだ」
「えっ?…、じゃあまさか…」
「ああ、おそらくは相和会だろう…。いくらなんでも高校生一人に刃物だしな」
「南部さん、そうなると、それって!」
「うん、そっちの”走り”の…、例の1年生が絡んでるってことになるよな…」
「やっぱり、ケイコには個人的恨みで…。じゃあ、亜咲が襲われた時もケイコを意図的に狙ったってことじゃないの?」
「そこまでは結論つけられないが、ケイコちゃんを利用して仕掛けてきた可能性はあるよ」
「要するに、南玉内部にいながら、南玉を外部から挑発しているって訳ですか?」
「そういうことになるよな。まあ、オレの推測だけどね。でも仮にそうだとしたら、岩本真樹子が表に出てきてる意味を考えないとな。少なくとも、南玉内の問題では収まらないはずだ。夏美、この都県境の命運がかかってると思わないと…」
...
「南部さん…。実は私、岩本真樹子と本郷麻衣が通じてるんじゃないかって睨んでたんです。二人が会ってるのを見かけたって証言も耳に入ってるし。まあ、又聞きのレベルですが。私はあなたの推測通りだと思う…」
「そうか…。いよいよ、本腰をあげてきたって感じだな」
「もし、そうだったとしたら、今から対処しておかないと…。私、どうしたらいいんですか?OG代表の立場も引き受けちゃったし…」
「夏美、この前も言ったけど、そうとなれば南玉連合だけの問題じゃないんだ。一人で抱え込むなよ。ミキさんやオレも含め、みんなで連携していこう。ハハハ…、責任感強いからな、お前…」
「ありがとう、南部さん…」
...
「まあ、岩本の所管はこっちだし、オレなりに情報を集めてみるよ。ただ、積田はあの性悪女で有名な岩本真樹子とは、昔から波長が合っててな。不思議なんだが…。とにかく、まずはケイコちゃんだ」
「そうね。奴らの企みとは切り離して、テツヤ君とケイコの二人を救わないとね。こんなことで引き裂かれたら、かわいそうすぎるよ。南部さん、私、今夜ケイコの家に行ってくる。それで、テツヤ君の話をそのまま伝えようと思うんだけど…」
「ああ、あえて何も隠さず、ありのままで話す方ががいいな。夏美、頼むよ」
「うん」
考えてみれば、南部さんの家には今日、初めて来たんだ
まさかこんなシチュエーションになるなんて、夢にも思わなかったわ…
夏美
少しして、南部さんと私は1階のリビングに下りた
「南部さん、これって…」
「ああ、岩本真樹子が出張って来てるんなら、”それなり”の背景ありってことだろうな…」
「私、体中の血が逆流してるわ。今すぐにでも岩本を叩きつぶしてやりたい」
「落ち着けよ、夏美。ここで熱くなったら、”奴ら”の思惑通りだ。ここは冷静にならなきゃ、本質を見逃すぞ」
「あなたは、つくづく偉いわ。その通りよ。だけど、卑劣極まりないわ。汚すぎる!」
「…いいか、お前も頭の中じゃ”薄々”だろうが、昨夜の仕掛けはテツヤ達二人を引き離す目的だけじゃない。いわば、それを表に掲げて、ケイコちゃんを獲物に仕立てたのかもしれない…。それと…」
「なに…?」
...
「テツヤが言ってた5人の男達、愚連隊系じゃなさそうだ」
「えっ?…、じゃあまさか…」
「ああ、おそらくは相和会だろう…。いくらなんでも高校生一人に刃物だしな」
「南部さん、そうなると、それって!」
「うん、そっちの”走り”の…、例の1年生が絡んでるってことになるよな…」
「やっぱり、ケイコには個人的恨みで…。じゃあ、亜咲が襲われた時もケイコを意図的に狙ったってことじゃないの?」
「そこまでは結論つけられないが、ケイコちゃんを利用して仕掛けてきた可能性はあるよ」
「要するに、南玉内部にいながら、南玉を外部から挑発しているって訳ですか?」
「そういうことになるよな。まあ、オレの推測だけどね。でも仮にそうだとしたら、岩本真樹子が表に出てきてる意味を考えないとな。少なくとも、南玉内の問題では収まらないはずだ。夏美、この都県境の命運がかかってると思わないと…」
...
「南部さん…。実は私、岩本真樹子と本郷麻衣が通じてるんじゃないかって睨んでたんです。二人が会ってるのを見かけたって証言も耳に入ってるし。まあ、又聞きのレベルですが。私はあなたの推測通りだと思う…」
「そうか…。いよいよ、本腰をあげてきたって感じだな」
「もし、そうだったとしたら、今から対処しておかないと…。私、どうしたらいいんですか?OG代表の立場も引き受けちゃったし…」
「夏美、この前も言ったけど、そうとなれば南玉連合だけの問題じゃないんだ。一人で抱え込むなよ。ミキさんやオレも含め、みんなで連携していこう。ハハハ…、責任感強いからな、お前…」
「ありがとう、南部さん…」
...
「まあ、岩本の所管はこっちだし、オレなりに情報を集めてみるよ。ただ、積田はあの性悪女で有名な岩本真樹子とは、昔から波長が合っててな。不思議なんだが…。とにかく、まずはケイコちゃんだ」
「そうね。奴らの企みとは切り離して、テツヤ君とケイコの二人を救わないとね。こんなことで引き裂かれたら、かわいそうすぎるよ。南部さん、私、今夜ケイコの家に行ってくる。それで、テツヤ君の話をそのまま伝えようと思うんだけど…」
「ああ、あえて何も隠さず、ありのままで話す方ががいいな。夏美、頼むよ」
「うん」
考えてみれば、南部さんの家には今日、初めて来たんだ
まさかこんなシチュエーションになるなんて、夢にも思わなかったわ…



