麻衣ロード、そのイカレた軌跡/補完エピソーズ集

その13
真樹子



「…さあ、飲んで。のど乾いたでしょう」

「いただこう、久美…」

「はい、いただきます…」

私たち二人は、麻衣さんが注いでくれた麦茶を一気に飲み干した

「あーっ、うまい!ふー」

「アハハハ…、もう一杯どうぞ。久美もさ…」

そう言って、麻衣さんは再度、麦茶をグラスに注いでくれてる

「麻衣さん、久美に筋書き伏せてってことだったけど、なんか、成り行きでそうもいかなかったわ。ごめんなさいね」

「はは、やっぱり無理あるよね、全部伏せるってのは」

久美は、私と麻衣さんの両方を、交互にきょろきょろ見てる


...



「久美、お前には”ナマ”で見せたかったんだよ、最後まで。今回の計画については、事前に説明とか何も言わないでいきなり、全部立ち会わせようってね」

「そうだったの…」

「いいか、終わった後も、こっちから解説だとかは特にしない。自分の頭で解釈したことが結論だよ。当分、こういう形で行く。そのつもりでな、久美」

「うん。麻衣も真樹子さんもよろしく頼みますよ。私、アタマ悪いから、なかなか期待通りには行かないと思うけど…」

久美は下を向いて、自信なさそうに小さな声でこう言った

私と麻衣さんは顔を見合ってたら、おかしくなっちゃって、大笑いしたよ

「あっはっは…」

「久美、そんなクソ真面目になるなよ。自然体でいいんだ。気が付いた時には、一皮もふた皮も剥けてるから。そうだよね、真樹子さん」

「ええ。久美、私はあなたを本気で鍛えるつもりだからさ。あなたもそれ、望んでたわよね。あなたには”素質”あるようだし、大丈夫。着いてこれるよね、久美?」

「あ、はい…。そういうことなら、しっかりついていきます。絶対に!」

ここで久美は力強く宣言したわ

目をキラキラさせて…

はは、この単純さがこの子の武器でもあるよ(笑)


...


「でも、いい?私があなたを連れて上る階段は、きれいなものじゃない。いや、口にするのもおぞましいほど汚いわ。その階段を上る都度、卑劣になれる。そんな階段を上らせてるのよ、久美には。久美ならって見込んでね。意味わかるよね?後戻りはできないけど、本当にいい?」

「はい、全然オッケーです!”それ”で、ガンガンお願いします…」

やっと、いつもの久美らしくなってきたわ

そうよ…、今回の一部始終を久美が自分の頭で”消化”しきった時、卑劣さに対する抵抗が一気に薄れる

楽しみだわ…

この”妹分”が、どこまで卑劣に徹する”嫌な女”になれるのか…

いっそ、私を抜いちゃいなさい、久美(笑)