ゴールドシートを独占した少女/その7
ケイコ


「よう、ケイちゃん!」

「わー、紅子さん!偶然ですねー、いやー、相変わらずデカいでね…」

「ハハハ…、お前もよう、相変わらず、長げーな、足…」

「へへ…、カモシカ健在っすから。そうですねぇ…、一週間で1ミリは伸びてますね」

「ギャハハハ…。最高だわ、ケイちゃんは。で、ちょっといいか…」


...


「あのですね…。私、単なるメッセンジャーならいいですよ。紅子さんや亜咲さんの間行き来する…。この都県境を盛り立ててくれてる姉御たちに、私なんかが出来ることなら微力…、惜しみませんよ。でもですよ…!」

「アハハハ…、だから、いいんだって、無理に答えなくったって。…なあ、だからよう、”お姉ちゃん”にも無理させんな。…はは、それで汲んでくれ。なあ…」

「紅子さん!」

「…お前にできるのはメッセンジャーだけじゃないんだって。ナビゲーターもだ。ケイちゃんの発する言葉は、愛あるクロージングだわ。…誰もが誘引される。はは…、才能だわ。ピュア極まるお前のよう…」

「あっ、今クロージングって言いましたね!なら、その材料下さいよ。伝説の女ライダーからバイクの夢奪う説得材料を!」

「…」

紅子さん…、固まらないでくださいよ…

頼みますよ…

...


「…紅子さんがそう言ったんか!ケイちゃん、答えろよ!」

「ええ、言ったっていうか、”お前を以って”伝えろって…」

「…」

「私は紅子さんから聞いたこと、フェアに見て事実だと思いますよ。…フリーでブイブイの亜咲さんが南玉連合に入った。もうすぐ次の総長だ…。で、ですよ…、この間の約10か月、紅組や南玉にハネられたライダー志望の猛る女達は、亜咲さんが本物の根性を持ったバイク乗りだけのチームをいずれ作る…。その為に皆が本物になろうと切磋琢磨していた…。事実だと思います、コレ」

「…」

「その結果として、ここしばらくはチンケな揉め事は激減しました。そんな風潮は、私あたりでも実感してますよ。…しかしながら、次期南玉トップに内定しながらも、この度やむを得ない家庭の事情を南玉総長の座より優先した。後継は亜咲さんの意向をしっかりと継承する。…この10か月、お姉ちゃんが南玉に在籍したから、次の体制があるんです。亜咲さん…!」

「押しつけだな、所詮…」

「亜咲さんのことを大切に思う人間からしたら、今、亜咲さんがギリギリの選択に迫られてるって知ったら、良かれの方向へと押し付けますよ。私だって…。まずは、学校をあきらめるの、あきらめませんか?」

「ケイちゃん…、そんな変な日本語でギリギリの選択を迫られる人間をエイヤーってのは、何なんだって気持ちになるわ。…さすが私の自慢の妹だってさ…」

「じゃあ、亜咲さん…」

「ありがとうな、ケイちゃん。紅子さんには感謝してるとヨロシクだ…」

...


数日後…

亜咲さんは南玉連合を脱退した

家庭の事情により…、ということで

だが、高校退学は見合わせた

その亜咲さんの決断には、私だけでなく横田家みなが喜んでいたよ



ー完ー