その0の続き


麻衣


私は、亜咲さんの家から約100Mほど離れた地点にいる

脇道との角で、農家の小さい倉庫の影になっている、恰好の”待機場所”だ

天候は幸い晴れていて、風もほとんどない

”現場”周辺でも、工事とかで人が集まっているとかもなく、”決行”に特段の支障はなさそうだ

亜咲さん…

私、イカレてるからさ

勘弁ね…

もう止められないんだ、私の中に流れる血を

自分を挑発し続けるケモノの滾りを…


...


私のこれからやろうとしてること…

それは、あろうことか、義理のお姉ちゃんとして心から憧憬している亜咲さんを襲うこと…

そして、”その前提”は、あの人が運転するバイクの後ろ…、あのゴールドシートにアイツが乗っかってる時…

その際、実際にバイク上から実行にかかる迫田リエに私が与えたミッションとは、後部シートの横田競子を負傷させることだった

傷つける対象は亜咲さんではなく、そのターゲットはアイツになるんだ

フン…、要は私の引火点を着火させたのが、横田競子だったって訳よ

半月前…

私がヤツと初体面を交わすまでは、”影さえも眩しい子”で収まっていた

だが、実際にヤツと接近遭遇したら、一気にそこ、超越したわ

亜咲さんが私ら二人の前から離れることになり、相馬さんに覚醒された今の私は、禁断究極の一歩を踏み出したってことさ

でもね…、言ってみれば然もあらんってことよ

って訳なんで…

横田さんよう…、行くぜ!



ー完ー