いけない、上の空になりすぎていた。冷や汗を掻く私に、彼女はじとっとした視線を向けて問題を投げかける。

「第二十一条よ。規定にかかわらず特別に昇任が認められるのはどんな時?」
「えー……世のため人のためになにかしらの貢献をした時……?」
「ふわっとしすぎよ、ふわっと!」

 キーッと怒り出すお義母様に、私は「申し訳ありません!」とおでこをテーブルにつけそうな勢いで謝り倒した。

 どうやら企業を急成長させただとか、ものすごい利益を出したとか、功労賞をもらった人は特例が認められるらしい。人命救助をして感謝状をもらった人なんかもそれに当たるので、あながち間違いではなかったみたいだが。

 お義母様はあからさまにため息をつくと、パタンと書物を閉じて腕を組む。

「まったく……集中力が途切れているのが目に見えてわかるわ。庭の草むしりでもして頭を冷やしてきてちょうだい!」

 庭の草むしり。今やっている勉強よりはるかに楽しい仕事を告げられ、私はぴくりと反応して顔を上げた。

 私のカップに紅茶のおかわりを注ごうとしていた佛さんが一旦手を止め、心配そうな表情でお義母様を見やる。