孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】

 ひとり悶々と悩んだ末、夕飯を終えて帰ろうとしている沢木さんを呼び止める。香苗さんには聞きそびれてしまったし、もう頼れるのは彼女しかいない。

「沢木さん! すみません、どうしてもお聞きしたいことが」
「なんでしょう」

 玄関ホールで足を止め振り返った彼女に、声を潜めて単刀直入に言う。

「黒凪家での、その……初夜について詳しく知ってますか?」
「はい?」

 沢木さんの無表情がぐにゃりと歪むも、切羽詰まっている私は質問を止められない。

「女性側はどうしたらいいんですかね? お風呂から上がったら、寝室で待っているべきなんでしょうか。まず、ルームウェアを着るのかバスローブのままのほうがいいのか……」
「なにを聞いてるんですか、なにを」

 棒読みでツッコんだ彼女は、ものすごく呆れた様子でため息を吐き出す。

「わからないことはなんなりと、とは言いましたが、まさかこんな赤裸々な質問をされるとは。深春様の頭の中には煩悩が隙間なく詰まっていらっしゃるんでしょうか」

 丁寧な言葉遣いにもかかわらず内容は辛辣で、私はギクリとしつつ気づいた。あ、この人毒舌だ、と。